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TAでのエッジとカインの再会時の会話、というのを既に何パターンか妄想済みなのですが、そのうちの一つをガーッと書いてたら、なんか小話っぽくなったのでアップしてみます。
バロン城内で、聖カインたちバロン組とエッジ&リディアたちのチームが合流したあたり。その場での一連の戦闘が終わった後、というイメージ。
…ですが、実は真月編をまだプレイしていないので、色々とオカシイと思いますすいません!!
なんか…各々でレベル上げたりアイテムGETしたりしてから合流したいな!とか考えてたら、ずるずると真月編が先延ばしに……orz
とりあえずレアアイテムとかは置いておいて、まずは一通りクリア目指してプレイするべきだと思う。私。
あ、ツキノワ視点です。視点からしてオカシイ!
エッジたちチームの後ろを陰ながら付いてきていた、という感じでお願い致します。俺設定申し訳ない><
だってツキノワ視点が書きやすかったんだ…(←言い訳になってない)
OKOK、設定オカシくても怒らないYo!という御心の広い方は、続きからご覧下さいませ…!
十年越しの第一声を、願わくば。
糸が切れたようにくずおれたバロン国王と、彼に兄と呼ばれた男の周囲で。場は一時、静かに騒然とした。
奇妙な表現だけれど、そう言うのがまさに正しい。と、主の数メートル後ろを影のように隠れ付いて来たツキノワは思う。
この場に居るのが平凡な市井の者たちだったら、きっと事態はもう少し混乱に陥っていただろう。
しかし、彼らの大半は国を統べる立場にいる者で、そのうちの多くは数々の修羅場を潜り抜けた猛者だ。驚き色めき立つ事はあっても、取り乱し必要以上に騒ぐ事は彼らにはあり得なかった。
蒼白な顔色で意識を失った夫に、バロン王妃はこちらも色を失いながらも、即座に呼吸を確かめ最大級の回復呪文を唱えて、寝室へと運ぶよう凛と指示を発する。誰よりも早くその声に応えてセシルを抱き上げたのは、つい先程まで正体不明だった黒衣の男だ。
ツキノワにとっては、彼の者は未だ正体不明の男に変わりない。
バロン王に兄がいたとは初耳だ。ツキノワはまだ年若いけれど、これでもエブラーナ王の一の部下たる四人衆の一角。他国の事情には決して疎くない。その自分が全く聞いたことすらなかったのだから、きっと何らかの事情で公にはされていない血縁なのだろう。
その事情を含めて、バロン王妃を始めとするこの場の幾人かは、「セシルの兄」という存在を知っているようだった。
最初こそ驚愕に目を瞠ったものの、すぐに納得の面持ちで彼を見詰める。その視線には複雑な感情が込められているように見えたけれど、何も言わずにセシルの身を彼に任せたことこそ、暗黙の信頼の証なのだろうとツキノワには感じられた。
王の寝室へと向かう王妃と黒衣の男に、秀麗で落ち着いた容貌の男性が声を掛ける。ツキノワにとっては初めて見る顔だが、あれはおそらくダムシアン王だ。バロン王妃たるローザと親しげに、だが一定の礼節を守った一言二言を交わして、この場の取りまとめを引き受ける旨を伝えている。
成程、此国の王が意識不明で王妃がそれに付き添うとなれば、当然の如く指揮を執る者が空席となる。誰かがそこに就かねばならぬのならば、思慮深き国王として他国からの信望も厚いダムシアン王が手を挙げるのは極自然なことと思われた。
(バロン王夫妻からの信頼、という点においては、お館様も負けてはいないはずだけど)
自他ともに認める『お館様信望者』であるツキノワは、チラリと敬愛する主君へ目を向けた。
主君がこういう多国の人が集まる場で殊更に中心を張りたがる人物ではないのは、充分に知っているつもりだけれど。しかし頼りにされて然るべき人柄であることは疑いなく、事実、このバロンに到るまでチームのリーダーシップを執ってきたのは彼だった。
だがその頼りになる敬愛すべき主君は、何故だろうか、ダムシアン王を中心に形成されつつある輪からは少し外れて立っていて。
鋭いその双眸は、じっと一点を観察しているように、見えた。
その視線を追って、ツキノワは眉を顰める。
――誰、だろうか。知らない男だ。
ツキノワはこの場にいる全員の顔を知っているわけではない。
だが大方は、その服装や容貌、言動を見て取れば、何処の国の如何なる人物かは予想が付いていた。
例えばあの見事な白髭の老人は、世界最高の飛空艇技師と名高いバロンのシド・ポレンディーナ殿。そしてバロン王妃に付き従って玉座の間を出かけたところで、振り返って不思議そうな顔で立ち止まった少年は、おそらくバロンの第一王子であるセオドア殿下だろう。
そのセオドア殿下の視線の先を見遣って、ツキノワは再度眉を顰めた。
実年齢よりもずっと聡明そうなバロンの王太子殿下が、遠慮がちながらも興味深げに、窺うような視線を送っているのは――ツキノワの主、お館様が見詰めているのと同一人物である。
長身痩躯、流れるような金糸の長髪を後ろでひとまとめに括って垂らし、眩いばかりの純白と澄んだ空の色に彩られた甲冑を着込んで、蒼く滑らかなマントを纏っている。
年の頃なら三十代の半ばだろうか。眉目秀麗、だが優男という表現は当てはまらない。歴戦の勇士と言って憚りない人物であろうことは、その背負うオーラを見ただけで明らかだった。
……ますます、判らない。
ツキノワは首をひねる。
この場に居るからには、さらにはエブラーナ王とバロン王子の視線を一身に集めているからには、それ相応の重要人物であるはずなのだが。ツキノワ脳内の各国重要人物名鑑には、彼のような男は載っていなくて。
ひょっとしてお館様もあの男の素性を訝っているのだろうかと思えば、それも違う。
何故ならお館様の目は、明らかに見知った相手を見るもので――
その視線に気付いて振り返った男も、お館様を目にしてヒタリと動きを止めたのだから。
歩数にして、五歩。
知人同士が会話をするにはどう考えても遠い距離で、二人は黙したまま視線を交わしている。
そんな異様な光景に、ツキノワとセオドア以外にもう一人、美しい緑髪の召喚士が気付いてパチリと目を瞬く段になって、ようやく。
忍の国の王は、口元を覆う布の下からゆっくりと、低く這うような声を発した。
「――何か言うことは?」
決して大声ではなかったけれど。
低気圧をはらんだその声は、場の注目を集めるに充分だった。
驚いたようにエブラーナ王を見遣った視線は、次いで彼に正対する男に向く。そこで幾人かは得心したような顔をしてから、気遣わしげに金髪の男を見詰めた。
どうやらここにいる者の大半は、あの金髪の男の素性を知っているらしい。知らぬは己ばかりかと焦ったツキノワは、同じように焦った顔をしている少年を見付けた。セオドア殿下はあの男とは知人であるようだったが、彼とエブラーナ王の間にある空気は何事か量りかねているようだ。
一身に注目を浴びた金髪の騎士は、周囲のどの視線よりも、正面五歩先の双眸に気圧された様子で息を呑んだ。
そして躊躇いがちに、口を開く。
「……久しぶり、だな」
外見から想像したよりもハスキーな声で吐かれた、その一言に。
主君の纏う怒りのオーラがグッと膨れ上がったのを感じて、ツキノワは思わず首を竦めた。
ピリリと張った空気を感じたのは当然、ツキノワだけではなく。誰よりも直接に肌で感じたであろう金髪の男は、慌てたように言葉を継いだ。
「ずっと、連絡しなくて……悪かった」
殊勝な、と形容して良いだろう声色で、僅かに首を垂れて。
しかし目は逸らさずに、きちんと、言い切った男に。
気遣わしげに彼を見守っていた空気は微かに和らぎかけて……エブラーナ王の深い深い溜息に、また少し、緊張した。
「確かにそれも一つの答えではあるけどな……一番じゃねぇだろうが」
お館様は両腕を組んで男を睥睨し、不機嫌と呆れと苛立ちが絶妙にMIXされた声音を発する。
「お前が今、一番に言わなきゃならねーことは、何だ?」
ひたり、と真っ直ぐに見据えて、そう問うた主君を見て。
ツキノワはごくりと唾を呑み込みながら相手の男を窺った。
自分の思い違いでなければ、お館様の今の口調は所謂最後通牒だ。ここで彼の者が求められている答えを口に出来なければ、我が王は間違いなく、怒る。
冷ややかにか烈火の如くか、どういう怒り方をするかは予想も付かないが、とにかく、この静かな玉座の間に堪忍袋の緒が切れる音が響き渡ることだけは確かだ。
ここまであからさまに、脅しにかけるかのような怒りの色を見せるお館様をツキノワは初めて見たけれど。
その身に纏うオーラが強い怒りと苛立ちだけで……相手への、嫌悪、のようなものが些かも感じられない事もまた、ツキノワを戸惑わせる一因であった。
お館様はこの人に、何を言わせたいのだろう。
多大な緊張と一握りの興味を込めて、金髪の男を見遣れば。
男は……ひどく思い悩んだ様子で、アイスブルーの瞳を葛藤に揺らして。
数度、口を開いては、閉じた後。本当にこんな台詞を吐いて良いものかと、まだ迷う様子を見せながら。
それでも漸く覚悟を決めたように――掠れた声を、発した。
「会いたかった」
ツキノワが驚いたのは、すべてだ。
その言葉自体にも。
ポツリと吐き出された声音があまりにも素直で、本心なのだと信じざるを得ない響きを帯びていたことにも。
その言葉を呟いた彼が、自身の台詞の意味にそぐわぬ、懺悔を終えて断罪を待つかのような神妙な表情を浮かべたのにも。
彼の後方で目を真ん丸にしているセオドアの顔にも。ちょっと目を瞠ってから、花がほころぶような笑顔を浮かべた召喚士にも。
そして。
己の敬愛する主君が、口布をグイと引き下げて。
「――正解だ」
怒りのオーラを綺麗に霧散させて、ニヤリと笑ったことにも。
「俺も会いたかったぜ、バカ竜騎士!」
組んでいた両腕を大きく広げて、よく通る朗らかな声でのたまったエブラーナ国王、エドワード・ジェラルダインに。
金髪の騎士は一瞬、端正な顔を泣き出しそうに歪めて。表情を隠すように片手で口元を覆った。
立ち尽くす男の頭を、五歩の距離を二歩で詰めた忍の王が乱暴に掻き回してカラカラと笑う。
その手付きの粗さに小声ながらも文句を言っているらしい金髪の男を見ながら。
――ああ、彼が『カイン』さんか、と。
ツキノワは漸く、彼の者の正体を得心したのだった。
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拙宅のエジカイは、「恥ずかしいぐらい堂々とラブラブ」(笑)が信条です。
糸が切れたようにくずおれたバロン国王と、彼に兄と呼ばれた男の周囲で。場は一時、静かに騒然とした。
奇妙な表現だけれど、そう言うのがまさに正しい。と、主の数メートル後ろを影のように隠れ付いて来たツキノワは思う。
この場に居るのが平凡な市井の者たちだったら、きっと事態はもう少し混乱に陥っていただろう。
しかし、彼らの大半は国を統べる立場にいる者で、そのうちの多くは数々の修羅場を潜り抜けた猛者だ。驚き色めき立つ事はあっても、取り乱し必要以上に騒ぐ事は彼らにはあり得なかった。
蒼白な顔色で意識を失った夫に、バロン王妃はこちらも色を失いながらも、即座に呼吸を確かめ最大級の回復呪文を唱えて、寝室へと運ぶよう凛と指示を発する。誰よりも早くその声に応えてセシルを抱き上げたのは、つい先程まで正体不明だった黒衣の男だ。
ツキノワにとっては、彼の者は未だ正体不明の男に変わりない。
バロン王に兄がいたとは初耳だ。ツキノワはまだ年若いけれど、これでもエブラーナ王の一の部下たる四人衆の一角。他国の事情には決して疎くない。その自分が全く聞いたことすらなかったのだから、きっと何らかの事情で公にはされていない血縁なのだろう。
その事情を含めて、バロン王妃を始めとするこの場の幾人かは、「セシルの兄」という存在を知っているようだった。
最初こそ驚愕に目を瞠ったものの、すぐに納得の面持ちで彼を見詰める。その視線には複雑な感情が込められているように見えたけれど、何も言わずにセシルの身を彼に任せたことこそ、暗黙の信頼の証なのだろうとツキノワには感じられた。
王の寝室へと向かう王妃と黒衣の男に、秀麗で落ち着いた容貌の男性が声を掛ける。ツキノワにとっては初めて見る顔だが、あれはおそらくダムシアン王だ。バロン王妃たるローザと親しげに、だが一定の礼節を守った一言二言を交わして、この場の取りまとめを引き受ける旨を伝えている。
成程、此国の王が意識不明で王妃がそれに付き添うとなれば、当然の如く指揮を執る者が空席となる。誰かがそこに就かねばならぬのならば、思慮深き国王として他国からの信望も厚いダムシアン王が手を挙げるのは極自然なことと思われた。
(バロン王夫妻からの信頼、という点においては、お館様も負けてはいないはずだけど)
自他ともに認める『お館様信望者』であるツキノワは、チラリと敬愛する主君へ目を向けた。
主君がこういう多国の人が集まる場で殊更に中心を張りたがる人物ではないのは、充分に知っているつもりだけれど。しかし頼りにされて然るべき人柄であることは疑いなく、事実、このバロンに到るまでチームのリーダーシップを執ってきたのは彼だった。
だがその頼りになる敬愛すべき主君は、何故だろうか、ダムシアン王を中心に形成されつつある輪からは少し外れて立っていて。
鋭いその双眸は、じっと一点を観察しているように、見えた。
その視線を追って、ツキノワは眉を顰める。
――誰、だろうか。知らない男だ。
ツキノワはこの場にいる全員の顔を知っているわけではない。
だが大方は、その服装や容貌、言動を見て取れば、何処の国の如何なる人物かは予想が付いていた。
例えばあの見事な白髭の老人は、世界最高の飛空艇技師と名高いバロンのシド・ポレンディーナ殿。そしてバロン王妃に付き従って玉座の間を出かけたところで、振り返って不思議そうな顔で立ち止まった少年は、おそらくバロンの第一王子であるセオドア殿下だろう。
そのセオドア殿下の視線の先を見遣って、ツキノワは再度眉を顰めた。
実年齢よりもずっと聡明そうなバロンの王太子殿下が、遠慮がちながらも興味深げに、窺うような視線を送っているのは――ツキノワの主、お館様が見詰めているのと同一人物である。
長身痩躯、流れるような金糸の長髪を後ろでひとまとめに括って垂らし、眩いばかりの純白と澄んだ空の色に彩られた甲冑を着込んで、蒼く滑らかなマントを纏っている。
年の頃なら三十代の半ばだろうか。眉目秀麗、だが優男という表現は当てはまらない。歴戦の勇士と言って憚りない人物であろうことは、その背負うオーラを見ただけで明らかだった。
……ますます、判らない。
ツキノワは首をひねる。
この場に居るからには、さらにはエブラーナ王とバロン王子の視線を一身に集めているからには、それ相応の重要人物であるはずなのだが。ツキノワ脳内の各国重要人物名鑑には、彼のような男は載っていなくて。
ひょっとしてお館様もあの男の素性を訝っているのだろうかと思えば、それも違う。
何故ならお館様の目は、明らかに見知った相手を見るもので――
その視線に気付いて振り返った男も、お館様を目にしてヒタリと動きを止めたのだから。
歩数にして、五歩。
知人同士が会話をするにはどう考えても遠い距離で、二人は黙したまま視線を交わしている。
そんな異様な光景に、ツキノワとセオドア以外にもう一人、美しい緑髪の召喚士が気付いてパチリと目を瞬く段になって、ようやく。
忍の国の王は、口元を覆う布の下からゆっくりと、低く這うような声を発した。
「――何か言うことは?」
決して大声ではなかったけれど。
低気圧をはらんだその声は、場の注目を集めるに充分だった。
驚いたようにエブラーナ王を見遣った視線は、次いで彼に正対する男に向く。そこで幾人かは得心したような顔をしてから、気遣わしげに金髪の男を見詰めた。
どうやらここにいる者の大半は、あの金髪の男の素性を知っているらしい。知らぬは己ばかりかと焦ったツキノワは、同じように焦った顔をしている少年を見付けた。セオドア殿下はあの男とは知人であるようだったが、彼とエブラーナ王の間にある空気は何事か量りかねているようだ。
一身に注目を浴びた金髪の騎士は、周囲のどの視線よりも、正面五歩先の双眸に気圧された様子で息を呑んだ。
そして躊躇いがちに、口を開く。
「……久しぶり、だな」
外見から想像したよりもハスキーな声で吐かれた、その一言に。
主君の纏う怒りのオーラがグッと膨れ上がったのを感じて、ツキノワは思わず首を竦めた。
ピリリと張った空気を感じたのは当然、ツキノワだけではなく。誰よりも直接に肌で感じたであろう金髪の男は、慌てたように言葉を継いだ。
「ずっと、連絡しなくて……悪かった」
殊勝な、と形容して良いだろう声色で、僅かに首を垂れて。
しかし目は逸らさずに、きちんと、言い切った男に。
気遣わしげに彼を見守っていた空気は微かに和らぎかけて……エブラーナ王の深い深い溜息に、また少し、緊張した。
「確かにそれも一つの答えではあるけどな……一番じゃねぇだろうが」
お館様は両腕を組んで男を睥睨し、不機嫌と呆れと苛立ちが絶妙にMIXされた声音を発する。
「お前が今、一番に言わなきゃならねーことは、何だ?」
ひたり、と真っ直ぐに見据えて、そう問うた主君を見て。
ツキノワはごくりと唾を呑み込みながら相手の男を窺った。
自分の思い違いでなければ、お館様の今の口調は所謂最後通牒だ。ここで彼の者が求められている答えを口に出来なければ、我が王は間違いなく、怒る。
冷ややかにか烈火の如くか、どういう怒り方をするかは予想も付かないが、とにかく、この静かな玉座の間に堪忍袋の緒が切れる音が響き渡ることだけは確かだ。
ここまであからさまに、脅しにかけるかのような怒りの色を見せるお館様をツキノワは初めて見たけれど。
その身に纏うオーラが強い怒りと苛立ちだけで……相手への、嫌悪、のようなものが些かも感じられない事もまた、ツキノワを戸惑わせる一因であった。
お館様はこの人に、何を言わせたいのだろう。
多大な緊張と一握りの興味を込めて、金髪の男を見遣れば。
男は……ひどく思い悩んだ様子で、アイスブルーの瞳を葛藤に揺らして。
数度、口を開いては、閉じた後。本当にこんな台詞を吐いて良いものかと、まだ迷う様子を見せながら。
それでも漸く覚悟を決めたように――掠れた声を、発した。
「会いたかった」
ツキノワが驚いたのは、すべてだ。
その言葉自体にも。
ポツリと吐き出された声音があまりにも素直で、本心なのだと信じざるを得ない響きを帯びていたことにも。
その言葉を呟いた彼が、自身の台詞の意味にそぐわぬ、懺悔を終えて断罪を待つかのような神妙な表情を浮かべたのにも。
彼の後方で目を真ん丸にしているセオドアの顔にも。ちょっと目を瞠ってから、花がほころぶような笑顔を浮かべた召喚士にも。
そして。
己の敬愛する主君が、口布をグイと引き下げて。
「――正解だ」
怒りのオーラを綺麗に霧散させて、ニヤリと笑ったことにも。
「俺も会いたかったぜ、バカ竜騎士!」
組んでいた両腕を大きく広げて、よく通る朗らかな声でのたまったエブラーナ国王、エドワード・ジェラルダインに。
金髪の騎士は一瞬、端正な顔を泣き出しそうに歪めて。表情を隠すように片手で口元を覆った。
立ち尽くす男の頭を、五歩の距離を二歩で詰めた忍の王が乱暴に掻き回してカラカラと笑う。
その手付きの粗さに小声ながらも文句を言っているらしい金髪の男を見ながら。
――ああ、彼が『カイン』さんか、と。
ツキノワは漸く、彼の者の正体を得心したのだった。
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拙宅のエジカイは、「恥ずかしいぐらい堂々とラブラブ」(笑)が信条です。
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